「探偵小石は恋しない」を読んで



森バジルさんを知ったのは、雑誌「ダ・ヴィンチ」2025年6月号の伊坂幸太郎さんの特集だった。
その特集の中で、伊坂さんの作品を種にした掌編を数人の作家さんが書いている。
森バジルさんもその一人で、「死神の精度」を種にしている。
この掌編を伊坂さんは「素晴らしいミステリーだと感動した」と言い、傑作であるとコメントしている。
伊坂さんのファンであるわたしも、心が躍った。
どれだけ、伊坂さんの作品を、また「死神の精度」を読み込んでいるのか!
伊坂さんスタイルを感じられる掌編に感激したのをきっかけに、森バジルさんの作品を読んでみたいと思った。
あれから数カ月が経ってしまったが、この度、森バジルさんの「探偵小石は恋しない」を読んだ。
この作品の中には、いくつかの小説のタイトルが登場する。
中でも目を引くのが、「死神の精度」と「死神の浮力」である。
このタイトルが出てくる場面では、一段階テンションが上がった。
これはぜひ、伊坂幸太郎さんご自身にも読んでいただきたい。
もちろん、伊坂さんファンにもぜひお勧めしたい。
また、この本のカバーの仕掛けも面白い。
何と表紙がリバーシブルになっているのである。


読み始めたとき、現代的な言葉使いに最後まで付き合えるだろうかと、戸惑った。
しかし、それは杞憂に終わった。
ストーリー、登場人物の個性、独特な言葉に引き込まれる。
「恋愛案件」という、いわゆる浮気調査を得意とする探偵事務所の物語である。
キーワードはタイトルにある「恋」であろう。
「恋」の形は色々だ。
耳たぶが真っ赤になる探偵の恋を応援したい。
そう思う最後だった。




















